medi-biz contents

連携プロジェクト

他の医療機関との連携による増患を行うために、病院で多職種による連携プロジェクトを組成運用したことが何回もあります。一番始めの案件の話です。

CTの共同利用による連携、とりわけ地域でニーズのあった歯科の治療に必要な撮影を行っていた病院でしたが、そのときには糖尿病をテーマとした眼科、そしてオペ患者や健診患者の紹介を受けるために内科の診療所をターゲットにプロジェクトをつくり巡回(営業)をしようということになりました。

前提として可視化のために部門別損益計算を導入しました。定量的に各診療科の弱点を掌握し、さらにマニュアル作成運用など改革を進めながらの増患プロジェクトでした。普段は外にでない看護師、放射線技師、検査技師、医事課等の職員7〜8名が選抜されメンバーになりました。

地域に出て活動を行ったおかげで実質的に組める医師との関係をつくりあげ、その後の紹介増につなげた事例です。

このプロジェクトを通じて分かったことは、他の業種同様にやはり連携は人のつながりによりつくられるものだ、ということです。相互に信頼関係をつくるための誠意をもった日々の活動の帰結であるということを確信したのでした。

前後してクライアントの名刺を持ち地方にある大学付属病院の院長とお会いしたとき、私が「どうしたら貴院との連携をより強くできますか?」とお聴きしたところ、「それは君、看護部長と事務長と仲良くなることだよ」と言われたことを思い出します。

リスペクトの大切さ

ところで、このプロジェクトにはいくつものエピソードがあります。

この連携プロジェクトを支援したとき、結構奮発して弊社から名刺入れを提供しました。挨拶のトレーニングも行いましたが、名刺入れを開けるとホワイトボックス株式会社の名前が刻印されていて皆が嫌がっていました。

「そもそもこういう接客の仕事が嫌で看護師になったのに、名刺を出して挨拶することなんてできませんよ」と真顔で反発するメンバーの看護師さんもいました。しかし、彼女はプロジェクトで多くの診療所を訪問している間に徐々に明るくなり、後半のミーティングでは「普段お会いしていない医師と意見交換ができて、いろいろ勉強になりました。本当によかったです。地域の事情も分かり、自院の活動の見直しもできました」と喜んでいました。

他にもいくつもの気づきがある職員が出てきて、プロジェクトを進めるにつれてどんどん活気が生まれ成果が出たのはとても嬉しかったです。

そういえば、連携先の眼科医師がプロジェクトメンバーの名刺を受け取るやいなや横に投げたとの報告を受け、プロジェクトリーダーである糖尿病の医師は、メンバーに対しその眼科との関係を直ちに止めろと指示を出したこともありました。

プロジェクトメンバーに悪印象を持たれた眼科医は、残念なことに毎月10人以上の当院からの紹介患者を失ったのです。社会人としての心得、大事ですね。

医療の質向上がブランドに

このクライアントでは、全体的な病院改革のなかで、増患プロジェクトが行われましたが、他に前述した部門別損益計算や業務改善、マニュアル作成運用を実施した結果、大きな変革についていけないスタッフが徐々に退職し看護部は50%近い入替があり、大変でした。しかし、困難を乗り越え残ったスタッフは業績を挙げて一騎当千のスタッフに成長したことも感慨深い思い出です。

さて、病院には営業という考えがありません。営業=自院のサービスを販促する行為(プロモーション)の一つであり重要な経営テーマであるにも関わらずです。そもそも職員は、比較優位性のないもの、自信なく自立できていない医療は、他に勧められません。活気がなく地域の評判も芳しくない病院では大方の職員が「家族には当院に来てもらいたくない」と口を揃えて言うのを何度も聞いています。

なので、連携には自立のためのブランディングが伴わなければなりません。多くの患者に来院、入院してもらうための医療の質向上によるブランディングは職員全員の役割であり、それを受けての連携プロジェクトという位置づけだったのです。

増患により環境を乗り越える

いずれにしても、コロナ渦に少子高齢化や社会保障費抑制、また他国民の可処分所得が低下し30年前を下回った時代を迎え、病院は厳しい環境を迎えています。自院の使命を果たすための医療の質向上や全職員によるプロモーションへの取り組みを継続し、成果を挙げていかなければなりません。

増患プロジェクトがいかに意味のあるものかを理解する時です。今でも連携、増患は地域連携室の役割である、としている多くの病院は考えを改める必要がありそうです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA